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 『Like a Butler』 クリア……なんですけれども。
 んー……。
 期待が高すぎたのかなー。
 全てを終えてみても、どうにもしっくりとこない感が。

 日常レベルでのやりとりに関しては賑やかさや華やかさがあって良かったと思うのです。
 んでも、全体のストーリーラインを考えると、どうしても足りていない部分があるような……。


 冒頭、夢のような抽選率に当選した奏がセレブが集う私立御星向学院へ通うことになった……という経緯は良いと思います。
 それが学院へ入学してから「何をすればいいのか」「何をしなければならないのか」といった押しが無いため、漫然と学院生活を過ごすことになっているところがわたしとしては減点ポイント。
 「庶民とセレブの意思疎通・交流譚」という流れが展開されるにしても、それは絶対のモノ(主人公の目的)ではないですし。


 たしかに奏や和樹の性格上、庶民を見下すセレブな生徒たちとも仲良くやっていきたいという志は立派だと思いますけれど、それですら「イザとなれば学院を去 ってもかまわない」という選択肢が可能であるためどこまで本気なのかわかりません。

 また、立場の違いをことあるごとに表に出して「同じ人間としては見ない」生徒たちの意識を変えようとする動きもありましたけれど、しかし人の価値観はそれぞれであることで必ずしも和樹たち「庶民」の側の理屈や価値観が正しいとも言えず、彼らは彼らで庶民の価値観念をセレブの生徒たちに押しつけようとしている……ようにも見えました。


 で、結局、中盤から先の展開においては「庶民の立場も理解するけれど、しかしわたしたちにはわたしたちの世界がある」というような表し方がされるとことがあり、結局、和樹たちがしてきたことはなんだったのだろうなぁ……と気が抜けてしまうトコロがありました。
 最低限、そうした立場の違いを彼ら彼女らに考えさせるような目的が奏の入学に備わっていれば、意識改革の芽を生んだと、これまでの行動が無駄ではなかったのだと実感できたハズなのですが……。

 もちろん理事長の考えとしてそれらしきことが雰囲気として表されていたりしましたけれど、直接的に展開として用意されていたわけではなく。


 「執事とお嬢様」「庶民とセレブ」といった身分差における恋物語も、その過程を見せてくれるものではなかった点が残念です。
 どのヒロインのストーリーも「お互いの立場では問題があるけれど、俺、がんばるよ!」的な意志を示しただけでエンディングなんですもん。
 で、そのエンディングでは「がんばった」「結果だけ」が示されて、互いのあいだにあった障害が無くなって万歳!となっていて、達成感やらカタルシスやらが飛び越えてしまっているのですよね……。
 せめて和樹が「身分や立場では変わること無い普遍的な想いを見せて、万民にわかるような認められかた」を示して欲しかったなー……と思うところ。


 比較するのは良くないかもですが、長谷川さんのAXLでの前作『恋する乙女と守護の楯』では、このあたりを「身体を張ってヒロインを守る」ということで問題をクリアしていたのではないかと考えます。
 押しも、目的も、達成感も、カタルシスも。


 誰もが認める普遍的な善性……なんて、簡単には描けないと理解できますけれど、そこは至らなくても挑んで描いてみてほしかったなー、と思います。
 なんちうか、今作は「勝負を避けた」ように感じてしまうのです。

 ……挑んで負ける(非難・批判を浴びる)よりはビジネス上、良かったのかもしれませんが、「勝負を避けた」と感じさせてしまってはビジネスでも失点だと思うー。



 はい、ではいつものヒロインの好感度順位です。

奏 >> 瑞穂 > 更紗 ≧ セーラ = 霧子
 

 ちょっと奏が一歩くらい抜きん出ていますかー。
 これは先述した「身分差の障害を取り除く」ことに作品が向かっていないことに起因するのではないかと考えています。
 お嬢様たちとの恋は必ずしも描ききったと思うには至らなかった反面、同じ「庶民」である奏の立場は最後まで大きなアドバンテージを有し続けたという。


 瑞穂もメイドという立場が他ふたりのお嬢様とは異なっていて、そこが優位に働いていたように思います。
 和樹と瑞穂、ふたりの前に立ちはだかる障害も身分や立場に関してのものではなく、家族愛的なものであったことが適当だったかなー、と。
 でも彼らの立場で問題解決を図ろうとする六右衛門の主張に対して、いつまでも煮え切らない和樹の対応にはイラチしたわ。
 否定も反論もするわけでなし、ただ決心をつけられないままで居続けることに。

 的確な反証でなくても良いので、なにか自分の考えを明らかにしてほしかったー。
 結局問題解決を図ったのは瑞穂の決心なんだもん。
 それが正しいかどうかは別にして、彼女の心を動かすようななにかを和樹が行っていれば良かったのだと思います。


 更紗に関しては、まあ、ちからわざでも実力行使に打って出たあたりが好感。
 搦め手も、裏工作も、なーんにもない正面突破で解決してしまったあたりが物語を薄味にしている気がしますけれども。
 もちっと、こう、御星家のあれやこれやに首突っ込んで、青天の霹靂クラスの大解決法を探し当ててほしかったです。
 「そんなフザけたシステムがなければ存続できないなら、滅びてしまえ」くらい言って欲しいのですよーん(^_^;)。

 あと、実は更紗のBadエンドがいちばんこの作品らしいエンディングなのではないかと思っています。
 庶民とセレブの溝は、結局埋まりませんでした……みたいなオチ。
 権力者は当たり前のように権力を行使するし、庶民はそれを受けるのみ。
 そんな両者に幸せな関係が築かれるハズが無い……って(TДT)。


 メインヒロインでは下位の感想を持ってしまったセーラなのですが、これはまぁ、彼女は負うモノが少なかったので物語が小粒にまとまっていたからかなぁ……と思います。
 他のヒロインが100点満点で50点であるなら、セーラはそもそも用意された設問が少ない50点満点のテストで50点であった……みたな。


 おまけヒロイン的なポジションの霧子先生でしたが、も少しボリュームあれば面白くなったかもなー……と思うところがあったので、残念!
 和樹は「オトコノコ」ではあったけれど「オトナ」ではなかったので、おちゃらけたお姉さんである霧子先生でも十分に「年上」を意識させてくれた行動をとっていたので。
 頼りになるかどうかは疑わしいですけれど、「頼りがい」はある人ですよね、霧子先生って(笑)。

 AXL作品って同年代か少し年下ヒロインが多いように思うので、霧子先生みたいな年上女性を正ヒロインとして描いてみた作品を見てみたいです。

 ……ああ、青山ゆかりさんがドSキャラだから、ほかに男性をリードするようなキャラが必要とされていないのかなぁ(^_^;)。



 そんな次第でわたしとしては期待より落ちてしまった今作でした。
 しかしAXLの作品構造はこれでわかった気がしますので、次回以降は購入の目安を得られたことで良い経験になったかなー。
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