本やアニメの感想と、日々のつれづれなることを~。
プロフィール

鈴森はる香

Author:鈴森はる香
独断やら偏見やら、感想と妄想が入り交じるサイトです。
Twitter

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
リンク
カテゴリー
月別アーカイブ
ブログ内検索

RSSフィード
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 第二次大戦終盤、ドイツとロシアが衝突したヨーロッパ東部戦線を描いた物語。
 ロシア軍の攻勢にさらされる中に舞い降りた、ひとりの女性士官と強大な新戦車「ケーニヒスティーガー」。
 彼女の存在は死線にあるドイツ兵たちの希望となり得たけれど、たかだかひとりの兵士が、そしていかに高性能を誇る戦車であっても、それだけで戦局を大きく変えていくハズも無く。
 敗戦へと向かっていく軍のなかで、時代に翻弄されながら同胞のため、そして未来に生きる友人のために死地に赴く悲劇の物語。


 うーあー……。
 これは素晴らしかったなぁ……。
 作中でも述べられているように、第二次大戦の東部戦線ってあまり物語られない部分だったかなーと。
 それは結局のトコロ、独裁国家のエゴがぶつかった「だけ」の戦いであるから、戦後において民主国家からは黙殺されてしまった部分なのかもしれないけれど。
 んでも、そうした語られない歴史の中でも人々の想いはあるものだと描いてくれました。


 優れた戦略・戦術眼を持った主人公フリーデリント・フォン・シュレーリン。
 あの時代、ナチスが支配した国においても国民すべてがファシズムに与していたというワケでなく、国にありて中から良き変化をもたらそうと挑んだ人がいたと。
 でも、どれだけ才能があろうとも、現実においては一師団どころか一中隊、よくてい大隊をまかされるところまでしか昇ることができないという。
 才能だけではどうにもならない、この世界のシビアな現実が。
 さらにはそういう才能を無為に散らすことしかできない国家の愚かしさが胸に痛いです。

 彼女のような志士が前線で命を賭けながら国を憂いているというのに、国を滅ぼす輩どもは安全な銃後に隠れて欲望をつきつめているという。
 物語で描かれる部分には、そうした無能者の欲望がさらに悲劇の連鎖を生み続けているという事実が描かれて、とてつもないやるせなさを覚えるのです。

 世の中、勇気も正義も持たずに自らの欲望を叶えるために賢く立ち回ったほうが良いのですか?
 そんなことがまかり通る世界に、人間が生きていく意味があるのですか?
 勇気も正義も、優しさも愛おしさも通じないのだとしたら、そんな世界のほうが間違っているのです。
 そこに生きるのであれば、人は知性を失った野獣に堕しているのです。


 フリーデや彼女とともに戦った人たちは悲劇でした。
 ナチスの暴走を食い止めきれず、望んだことではなかったとはいえ戦争で多くの人を殺めていったことは許されることではないのでしょう。
 でも、彼女たちは生き残る仲間のためを思って戦い続けた。
 決して欲望にまみれた野獣を生かすために戦ったわけではない。
 それだけは忘れてはならないし、貶めることのできないことだと思うのです。



 ケーニヒスティーガーという新兵器が幾度の窮地を救ったという様が描かれていますけれど、それが決定的で絶対的な存在になったわけではないというところも物語として良かったです。
 高性能とはいえ万能ではなく、もちろん無敵であるわけもなく。
 試作機のため9輛しか投入できなかった車輌は、戦火のなかで次々に姿を消していき、やがて主人公とともに命運を共にしていくワケで。
 高い志を抱きながら前線に留まり続ける立場であったフリーデと同じく、いかな高性能の兵器といえど圧倒的な物量差の前には絶望的であったと……。

 エンターテインメントに傾くのであればフリーデはどんどん出世していって軍司令にでもなって戦局を動かすのでしょうし、ケーニヒスティーガーはその能力でもって時代遅れの敵戦車を鮮やかに撃破していくのでしょうけれど。
 しかし現実を思えばそれはとほうもない夢である……と。
 その夢と現実の対比がどこまでもやるせないのですよ……。


 もちろんだからといってドラマ性が薄れているのかといえば決してそんなことはないのですよね。
 フリーデに憧れる少年兵や、そんな少年兵を支える女性兵士もいますし、フリーデ自身にも男女の機微が描かれますし。
 また知略を尽くして繰り広げられる戦闘描写が緊迫感臨場感ありすぎ。
 兵器のスペックに頼りきりになるのではなく、あくまで兵器は兵器、運用する人間の頭脳があってこそです。
 読み合い、出し抜き、そして賭けに打って出る様には興奮したわ!



 水樹センセってレディース・コミックを描かれる漫画家さんなんですね。
 もともと歴史や戦史に関心があったそうですが、それが食玩「ワールドタンクミュージアム」に魅せられてこんな作品まで上梓することに……(笑)。
 好きこそものの上手なれ、ですか。
 しかし単に興味があるという程度では済まない力量を今作から感じました。
 作家としてのご活躍も期待しております(^-^)。


スポンサーサイト
<< 着席スタイルのLiveかぁ……むむむ // HOME // ライブスケジュールを眺めてると、もう夏気分よね! >>

管理者にだけ表示を許可する
この記事のトラックバックURL
http://maturiya.blog107.fc2.com/tb.php/870-3866b860
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
// HOME //
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。