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 ああ、また夏がきたんだな。
 この言葉で始まる関口尚さんの解説は名文だと思う!
 うんうん、そうそう。
 樋口センセのデビュー作『僕と、僕らの夏』を彷彿とさせる、ひと夏を舞台にした青春ミステリ。
 もー、なんちうか、夏と青春の親和性の良さを体現する作品ですわ。

 関口さんの解説では、ほかにキャラクターの立ち位置やら動機付けの妙まで説明されていて、これがいちいちまた的確かつ造詣に深くて。
 ただの読者という視点ではなく、真に「解説者」たらん文章とはこーゆーモノを指すのだなぁ……と感じます。
 解説はね、感想文とは違うのだと。

 作品の出来不出来によって、そこに用意される解説の熱も移ろうもので。
 素晴らしい解説が添えられている作品は、もちろん素晴らしい作品に他ならず。
 わたしはそう思うのです。



 で、本編。
 知人の死の状況に不自然なものを感じた主人公とヒロインが事件を探っていくうちに、いままで見えてなかった知人の言動を知るに至って驚愕するも、「だからといって殺されていいわけじゃない」という理不尽さに対する静かな怒りで犯人を追いつめていく……という、樋口文学では定番のストーリー。
 ええ、ええ、お約束通りで慣れ親しんだ展開なのですけれど、それを高校生男女がセットになって動いていくというところが、デスねっ!(≧▽≦)

 冷静で、家事に長けていて、鈍感で無遠慮なところが多分にあるけれど、傷つけるウソは良くないことだと理解している優しさをもったオトコノコ。
 感情的で泣き虫で、怒るとすぐに手が出るけれど(足のときも!)、置いていかれそうになると寂しさを感じずにはいられないような、子どものような無邪気さと素直になれない大人の気概を持った我の強いオンナノコ。

 んもー、んもー、んもーっ!
 こういうコンビを描かせたら、樋口センセは最高ですわね!(≧▽≦)
 ふたりが一緒に食事をするシーンも定番なのですけれど、そこで繰り広げられるワイズラック!
 ひゃー、もー、堪らないですよ、抜き差しならない緊張感を持った応酬が(笑)。

 主人公の親と一緒に食事をするというのも珍しいシーンなのかも。
 今作のヒロイン、友崎涼子ちゃんが招かれた食卓では、主人公、広田悦至くんのご母堂と同席することになって。
 男性批評をする際に母上と彼女がタッグを組んでしまっては、悦至くん、勝てるワケがねーっ!(笑)



 推理ミステリとしても、犯人像と被害者の実情が調査が進むにつれて二転三転していくので先が読めなくて飽きないっちう。
 エンターテインメントとして構造をよく練られているなー、と思うのです。

 ラスト、犯人を指摘して、罰して、すっきりとした爽快感を――与えない、というのも樋口文学の特徴で(笑)。
 この世が善と悪ではっきりと二分されているわけではない。
 探偵として事件を探った主人公とヒロインにしても、犯人を捜し出して罰したい、復讐したいという気持ちがあったワケでなく(無かったとは言いませんけれど)、事件の真相を知りたいという欲求、なかでも表向き見えている理由だけで被害者が評されることを納得いかなかったという心情が動機付けなので。
 被害者の名誉?が回復できないまでも自分たちが知る被害者として納得できれば良いのですよね。
 もちろん罪を暴いたのですから、この先に犯人には苦悩と懊悩が待っているワケですけれど、そこは主人公たちが関与するところではない、と。

 真相を知るまでが探偵の役割で、罰するのは大人の役割。
 ここが青春ミステリに必要とされる基本構造な気が。
 勧善懲悪が陳腐だと言うつもりはありませんけれど、こと青春ミステリにはその構造は似合わないのではないかなーと。

 十七歳という年齢はきっと立ち止まれないのだろう。いつかは苦い真相に行き当たるとわかっていても、暴いていってしまうのだ。十七歳というのは、どうしたって見えているものの裏側を求めてしまう年齢なのだと僕は思う。
 (中略)
 たくさん知ってしまう。そして、気づいてしまう。いちばん繊細な心で、いちばん苦い真実を暴いてしまう。こうした取り合わせが生まれるのは、十代半ばからの気づきの多い時代だからこそ。僕が青少年期とミステリの相性がいいと考える所以は、ここにあるのだ。


 最後に関口さんの解説より青春ミステリの骨子に触れた一節を。
 まさに、正鵠。
 そしてそれを体現している作品が、樋口センセのそれなのだと思うのです。


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